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里山ちーびず女子養成講座 Vol.1
2014年6月21日・22日(土・日)

2015-02-26

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天気予報では夕方から雨。そんな天気で迎えることに不安を持って始まった本講座第一回目。初回で広報もうまく浸透せず、「女子」というより「男性」が多くなってしまったことも若干引け目だったものの、わくわくした顔で続々いらっしゃる参加者の方々を見て「よし、絶対楽しくするぞ!」と気合いが入りました。

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まず最初は、本講座の概要説明。参加してくださった方のほとんどは私たち美山里山舍主催の他のイベントやオリジナルストーブに興味を持って来て下さった方々で、特に本講座のタイトルや主旨などは気に留めていなかったため、ここで「ちーびずとは何ぞや?」「なんで里山ちーびず女子?」と、しっかりと説明させて頂きました。

そして炭窯の製作工程のご説明。これから完成するであろう炭窯づくりに貢献して頂くという意識を確認して頂くためにも必要なことです。

炭窯のある敷地に位置出しをし、土を掘って掘って、屋根をかけて、瓦を積み上げて…という工程を、写真とともに紹介しました。野外でのプロジェクタ投影だったためちょっと見にくそう…で申し訳なかったです><が、参加者の皆様には何とか伝わりました。

この日は丹波で竹炭の窯を作った方も参加して下さっており、その方からも築窯の体験談などを聞きながら、炭窯づくりに対する質疑応答を交えながら、炭窯づくりのプログラムへ移行しました。

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さて、炭窯は大きいけれど、参加者みんなで入ったら身動きがとれぬ…というわけで、2手に別れての作業にしました。炭窯づくりのグループと、すぐ隣の敷地で行われている丸太の大きな作業建家づくりに参加するグループ。40分で、交替です。

まず、炭窯づくりの方は、窯の内側の壁と床の突き固め。赤土をスコップでとって、窯壁につけてカケヤや足でけったり叩いたりして固めていきます。水で練った赤土と瓦を交互に重ねながら積み上げた窯壁は未乾燥で少しゆるく、気をつけながらの作業でした。作業を始めると、皆様一心不乱。黙々と動きます。人間はそもそも何も考えずに身体を動かすのが好きな生き物なのではないか…と思ってしまうほどに笑 

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そして、丸太の建家の方では、伐り倒したばかりの生の丸太をその場で皮むきし、チェンソーでホゾの加工をして組み上げていく、シンプルかつ剛胆な「ポスト・アンド・ビームス」の手法について、生の木が乾燥の過程で変形していくことを見越しながら加工をしていくといったような説明をしてもらいながら、実際に皮むきとバックホーを使った丸太の移動をするというものを。こちらもバックホーに初めて乗った参加者がノリノリでハマっている状態!女性の方も相当にエキサイトしておられて感心!いたしました。

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そんなこんなで時が過ぎ…みなさん疲れて水を飲んでいるところに…参加者のお一人が連れて来られたラブラドール・レトリバーが、涼を求めて水路に飛び込み、一目散に駆け出しました!しぶきを上げて思いっきり走る犬の愛らしいこと…参加者みんなで和やかに笑っていました^^

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さて、一仕事の後は、おまちかねの和太鼓ワークショップです。この冬に美山に引っ越してきた講師の平さんは、まだお若い方。関西を中心に太鼓の可能性を広げながら演奏活動をしておられます。さあ、レッスン開始。まず平さんがバチを握り、細い身体から深く響く音を響かせてくれた瞬間、みなテンションがMAX!しかしながらみなさん恐る恐る叩くものだから、あまりいい音がしません。平さんはうま〜く皆を誘導して、どんどん本気の音を引き出して、なんと最後の方では参加者11人総勢できれいに合奏が完成したじゃないですか!聞いてるだけの私共スタッフも、聞いているだけで楽しくなる!鳴り響く音は山を越え、福井県で仕事をしていた林業家さんも音を頼りに見学に来はりました。


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太鼓の音は誰しもを魅了するのですね〜!
で、魂込めすぎて疲れ果てた皆様、太鼓のレッスンはもう終わり。次は美味しい夕食タイムです。しっかり暖められた石窯でのピザと若鶏の焼き肉と、薪のクッキングストーブを使った鶏と野菜の煮込みにダッチオーブン、土鍋炊きのご飯、煮豆やサラダなどがテーブルに並びます。

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ピザはカフェ里山舍で提供している天然酵母のピザ生地を、参加者の方みずから成形してもらいました。石窯でやかれたピザはやはり絶品!あれよあれよと言う間に、Mサイズ18枚のピザはぺろりと皆さんのお腹におさまっていきました。

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お腹もいっぱいになったところで、参加者みんなの自己紹介と今回の参加の動機、本日の感想を述べて頂きました。大学生に庭師さんに設計士さん、住まいは関西圏から東北まで、ほとんどが口コミやお誘い合わせで来て下さった本当に幅広い皆様が、「疲れたけれど楽しかった!」「和太鼓は意外だったけれどすごく楽しかった」「色んなことが学べた」「また参加したい」と声を揃えておっしゃって下さり感激でした。
作業と和太鼓を通して仲良くなった皆様、終止和やかに歓談をしつつ…あ、もう9時過ぎてますよ!!

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シトシト降る雨に、ホタル鑑賞の散歩を諦めかけていたとき、なんと部屋のすぐ前の茂みのなかにポ〜ッポッ〜と光るホタルが数匹。気がつけば部屋の中にも入ってきて、光ってる!これはこれで、「”蛍の夕べ”だな」と笑いながら、宿泊なしでご参加の皆様をお見送りしました。

さて、宿泊をされた方しか体験できない特別なコト…それはなんといっても五右衛門風呂。下半身から肩にかけてじっくりと暖める薪の火の温もりの心地よさはなんとも言えない贅沢です。今回の宿泊者数は少なかったので、できるだけじっくり入ってもらって疲れをとってもらいました。

美山の夜風は涼しい。湯上がりに一杯やりつつ、とりとめもなく色々な話をしながら、ゆったりと睡眠時間に。1日目が終りました。

小雨がしっとりと気持ちのいい朝。美山の納豆や卵、自家製の梅干しをつけあわせに、お粥の朝食でパワーチャージ。建築についての話を講師の小関から聞きつつ、近所に住んでおられる炭焼きの竹沢さんの炭窯を見に行きました。竹沢さんの家は江戸時代後期に建てられた、重要文化財でもある貴重なかやぶき民家。古くても大きく立派な佇まいは、外から見るだけでも見応えがあります。竹沢さんは家のすぐ近くでハチクの筍の下処理をしておられました。「炭窯には遠藤さん(職人さん)がいるよ。」

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炭窯に行くと、途中まで材の入った窯のすぐ前に炭焼き職人の遠藤さんが座っていらっしゃいました。いつもこの窯に来ると見られる光景。炭焼きの工程は非常に長いため、こうして静かに佇んで待っておられることが多いのです。どうやら今は窯に材入れをしている途中の様子。「中に入ってみる?」と言われ、入ってみると…案外広くてびっくり。綺麗に切りそろえられた材を見ながら、「なぜ長さが揃っているのですか?」と聞いてみると、そうすることで熱の当たり方が均一になるとのお応え。
炭焼きはいかにうまく火を操るかによりますが、窯の形状や構造だけでなく、材の入れ方によっても大きく変わるのですね。
「最近は材が少なくて、まだ窯が埋まらない」という遠藤さん。炭に適しているのはナラやカシですが、それらが最近は薪ストーブ用の薪の需要の高まりで手に入りにくくなっているのですって。「厳しい現状やね」—高齢の職人さんが多い炭焼きを取り巻く「手間がかかりすぎて利益にならない」「原料が足りない」という問題は、深刻になるばかりー。

美山も昔は炭窯だらけだったらしいです。今でも80代の方々に、昔は山仕事をしていて炭も焼ける、という人は多く居ます。山間地ならではの豊かな森林の恵みを生かし、炭を特産品として京都市内へ売りに行っていたのです。
今は、そんな地域の資源を自分たちのためにも使わず、収入源にもせず、ほったらかしにしながら、逆にお金を払って石油由来の資源を外から得ている。そして、ほったらかしにしている山は、樹種が変わったり採取しにくくなったりしてどんどん「使えない」状態になっていく。山は継続的に手を入れて、ベストの状態を保たなければいけない。かつて炭焼きさんは、炭焼きがしやすい状態に山を維持してしたものだったけれど、そのような営林と燃料の生産が“持続可能”な絶妙なバランスで行われている例をみることは、本当に難しくなってしまいました。

今回の炭焼きワークショップは、今はまだ元気でいてくれている、ご高齢の元炭焼きのおじいさんたちからの炭焼きのノウハウを維持・継続させ、美山の中でまかなえる自給エネルギーのかたちを模索する、ということが大事な目的となっています。若い人が、喜びを持って炭を焼き、その炭が美山町内外で日常的に使われながら、山と炭焼き文化の保全につながる日を目指して、まずは良い炭窯をつくり上げ、あとは炭の良さをもっとたくさんの人に知ってもらうきっかけとなるように…頑張って行きたいと思います。

ともあれ、今回は本当に、素敵な参加者のみなさんに有意義な時間を過ごしてもらい、笑顔で帰って頂けてとてもうれしかったです。来月も、いい回にするべく一同気を引き締めますので、どうぞご参加くださいね!

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↑NY在住のデザイナー the Denizen.co さんが撮ってくださった、竹沢さんの炭窯の写真です。
↓同じく the Denizen.co さんの写真。竹沢さんの炭窯へのアプローチとなる林道
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